時々、聞きますよね。
「医業類似行為」という小難しい用語。
今回はこれについて解説します。
「医業類似行為」とは、【医業に類似した違法な行為】というのがそもそもの意味です。
そう、「医業類似行為」は「違法行為」です。
法的根拠もあります。
『あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律
第十二条 何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない。ただし、柔道整復を業とする場合については、柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)の定めるところによる。』
『第一条に掲げるものを除く外』とありますので第一条も併せて見てみましょう。
『あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律
第一条 医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。』
つまり『医師、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の行う業は免許行為であって医業類似行為には含まれないが、どんな人であろうとも医業類似行為を業としてはならない』ということです。
たとえ医師であっても天皇陛下であっても医業類似行為は認められていません。
罰則もあります。
『あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律
第十三条の七 次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
一 第一条の規定に違反して、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業とした者
二 虚偽又は不正の事実に基づいてあん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許を受けた者
三 第七条の二(第十二条の二第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
四 第十二条の規定に違反した者
五 第十二条の三の規定に基づく業務禁止の処分に違反した者
② 前項第三号の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。』
第十三条の七の四が医業類似行為を業とした場合の罰則です。
さらには、仙台高等裁判所が昭和二十九年六月二十九日の判決で以下の通り医業類似行為を定義しています。
「疾病の治療又は保健の目的を以て光熱器械、器具その他の物を使用し若しくは応用し又は四肢若しくは精神作用を利用して施術する行為であつて他の法令において認められた資格を有する者が、その範囲内でなす診療又は施術でないもの」換言すれば「疾病の治療又は保健の目的でする行為であつて医師、歯科医師、あん摩師、はり師、きゆう師又は柔道整復師等他の法令で正式にその資格を認められた者が、その業務としてする行為でないもの」
以上が医業類似行為の全体像です。
まとめます。
医業類似行為のポイント4つ
1、違法行為である
2、いかなる人もやってはいけない行為である
3、やったら罰則がある
4、ちゃんと定義が定められている
これが医業類似行為の全てです。
では、次に巷に溢れる医業類似行為に関するウソに対して上記の法的根拠によって論破していきましょう。
医業類似行為のウソ
ウソその1、「はり、きゅう、あん摩マッサージ指圧、柔道整復は医業類似行為」
→はり、きゅう、あん摩マッサージ指圧、柔道整復は法令に基づいた資格による免許行為なので医業類似行為ではありません。
ウソその2、「医業類似行為には、狭義の医業類似行為と広義の医業類似行為があり、狭義の医業類似行為は法令による資格に基づかない行為で広義の医業類似行為は資格に基づく行為」
→狭義も広義もありません。法律で禁止されているのが医業類似行為です。
医業類似行為をやったら罰則があり、さらには無免許ではり、きゅうあん摩マッサージ指圧をやっても罰則があります。例えば、無免許で鍼灸をやったら罰則があるのはもちろんですが、鍼灸が医業類似行為だった場合、鍼灸師が鍼灸をやっても罰則があることになってしまい、法的に矛盾します。だから狭義と広義の医業類似行為論はウソです。
ウソその3、「第十二条の『第一条に掲げるものを除く外』の意味は『免許を持っている者を除く外』だから免許者は医業類似行為をやっても良い」
→第十二条の『第一条に掲げるものを除く外』の『もの』はひらがなの『もの』です。
法律での『モノ』には、「物」と「者」と「もの」では意味が全然違います。
「物」→物件を表す
「者」→人間を表す
「もの」→行為や業など人間でも物件でもないものを表す
第十二条の『第一条に掲げるものを除く外』はひらがなの「もの」なので第一条に掲げる免許行為、つまり「医業」、「はり業」、「きゅう業」、「あん摩業」、「マッサージ業」、「指圧業」のことを言っているのです。「それらの業は医業類似行為には当たらないが」と読まなければならず、そうでなければ法律に矛盾が生じるので間違った意味になるのです。
いかがでしょう?
他にも医業類似行為に関するウソが巷には転がっています。
転がっているどころか厚生労働省が上記のようなウソを平気で通知していますし、国会ですら真っ赤なウソを答弁しています。「行政がウソをつくはずない!お前が言ってる方が間違いだろ!」という声も聞こえてきそうですが間違いはありません。なぜなら法律にそう書かれていますし、裁判所が医業類似行為について定義しているのです。日本は法治国家です。法に基づいて国が治められています。行政よりも司法の方が上位です。三権分立の頂点は司法ですよね。
法に矛盾することが行政や国会であった場合、間違っているのは行政であり国会です。
何が正しくて何が間違っているのか、ここまで読み進めていただいた方にはお分かりいただけたのではないかと思います。ただ残念ながら、正しいことが世間に浸透していないのが現状なんです。正論が通用しないとどういうことが起こるのか?例えば「整体」です。これについては以下のブログで詳しく書きました。これも併せてお読みいただけると幸いです。
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