2024年5月、講談社ブルーバックスより『東洋医学はなぜ効くのか ツボ・鍼灸・漢方薬、西洋医学で見る驚きのメカニズム』という書籍が出版されました。
東洋医学の鍼灸や漢方薬が、現代の西洋医学の視点から見て、どのように作用し、効果を発揮するのかについて解説した書籍です。
東洋医学は、長年の経験に基づいて発展してきた伝統医学であり、西洋医学は、科学的な根拠を重視する現代医学です。本書では、最新の西洋医学の研究成果を基に、東洋医学のメカニズムを解き明かしています。
鍼灸は、ツボと呼ばれる特定の部位に鍼を刺したり、お灸をしたりすることで、体の不調を改善する治療法です。本書では、鍼灸が神経ネットワークに影響を与え、免疫機能を高める可能性が示唆されています。また、ツボには、特有の神経構造が存在する可能性も指摘されています。
近年、東洋医学の効果を、科学的に説明するための研究が進んでいます。本書では、これらの研究成果を紹介し、東洋医学が、現代医療において補完的な役割を果たす可能性を論じています。
本書の中で鍼灸がどのような症状に対してどのようなメカニズムで効果を発揮しているのかを説明しておりますのでその部分をこちらで解説して行きたいと思います。
現在のところわかっている鍼灸の効果は大きく分けて以下の3つです。
1、痛みの症状を抑える効果(鎮痛効果)
2、無意識の緊張やリラックスを調整する効果(自律神経調整効果)
3、ウイルスなどの外敵から身を守る機能を最適化する効果(免疫機能調整効果)
上記3つの効果はそれぞれ以下のメカニズムによってその効果は発揮されます。
1、痛みの症状を抑える効果(鎮痛効果)
①抹消神経が関わる作用(軸索反射)
②筋肉で生じる作用(腱紡錘の活性化)
③細胞から分泌される鎮痛物質が関わる作用(内因性オピオイド)
④ATPが関わる作用(アデノシン)
2、無意識の緊張やリラックスを調整する効果(自律神経調整効果)
①体性自律神経反射
②SAM軸
3、ウイルスなどの外敵から身を守る機能を最適化する効果(免疫機能調整効果)
①局所での免疫作用
②HPA軸
③SAM軸
④炎症反射
⑤足三里
今回は1、痛みの症状を抑える効果(以下鎮痛効果と言います)の①抹消神経が関わる作用(軸索反射)のメカニズムについて上記の書籍に基づいて解説します。
鍼治療によって肩こりや腰痛、五十肩や各種の関節の痛みなどに鎮痛効果が発揮されることは昔から知られていましたがそのメカニズムが近年わかってきました。
それは4つの作用によって鎮痛効果がもたらされているということです。
まずは①抹消神経が関わる作用(以下軸索反射と言います)についてです。
①軸索反射
鍼を皮膚に刺した際、その周囲が赤くなることがあります。その反応が軸索反射によるものです。
鍼を刺した部位の周辺の血流が増加するために赤くなります。
以下の図をご覧ください。
軸索とは神経細胞の長く伸びている部位のことです。

鍼の刺激が神経細胞の軸索に入ると神経性の炎症が引き起こされ、さまざまな神経伝達物質が放出されます。
それらの中には血管を拡張させたり色々な物質を血管に通しやすくする作用を持つものがあります。
鍼の刺激によって神経性の炎症が起こった部位の周辺はそれによって血流が増加します。
肩こりなどで筋肉が硬くなり、血流が悪化した部位には痛みを発生させる物質が集まっている状態です。
そこに鍼刺激を行うと血流が改善してそのような物質が取り除かれ、肩こりによる痛みが緩和されることにより鎮痛効果が得られます。その際、皮膚が赤くなるのです。

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