第十二条 何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない。ただし、柔道整復を業とする場合については、柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)の定めるところによる。
あはき法第十二条は専門学校ですら誤って教えている条文であり、もっと言えばはり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師の国家試験すら誤って作成されています。
どこをどう誤解されているのかというと、「何人も、第一条に掲げるものを除く外」の『もの』とは何か?ということです。
ゆっくり見ていきます。
「何人も」は「どんな人でも」ということです。ここは問題ないですよね。
「第一条に掲げるもの」は第一条を見る必要があります。
第一条 医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。
第十二条で述べられている第一条に掲げられている「もの」と考えられるのが大きく分けて2つあります。
1、あん摩、マッサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業とする者
2、あん摩マッサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許
どちらでしょうか?
もし1だとするならば、第一条で掲げられている「もの」は「者」であり、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師のことということになります。
そういう解釈だとするならば、
「何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない。」は、
「どんな人でも第一条に掲げている免許の所持者以外は医業類似行為をすることは許されません。」
ということになります。
もっと噛み砕いて解釈すると、
「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の免許を持っている者は医業類似行為を許されますが、それ以外の者は許されません。」
ということになります。
こう読むとあん摩マッサージ指圧もはりもきゅうも医業類似行為なのではないか?
と考えてしまいますよね?
では2だとすればどうでしょう?
「どんな人でも第一条に掲げられているあん摩マッサージ指圧師免許、はり師免許、きゅう師免許、それぞれの免許の範囲以外は医業類似行為となるのでやってはいけません」
こんな感じでしょうか。
これであればあん摩マッサージ指圧、はり、きゅうと医業類似行為ははっきり区別されます。
そう、正解は2です。
法令用語にはその用い方に決まりがあります。
例えば「者」と「物」と「もの」は以下の通り区別して使われます。
「者」 人間を表す
「物」 物件を表す
「もの」 行為や業など人間でも物件でもないものを表す
もう一度あはき法第十二条を見てみましょう。
「何人も、第一条に掲げる『もの』を除く外、医業類似行為を業としてはならない」
『もの』
ひらがなで書かれています。
ひらがなの『もの』なので行為や業ですね。
あはき法第十二条の『もの』は、あん摩マッサージ指圧師免許、はり師免許、きゅう師免許を指しています。
あはき法第十二条「何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない」ははり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師の免許を持たずにはりやきゅうやあん摩マッサージ指圧を行うとそれは「医業類似行為」となるので無免許で施術をしてはいけない、という意味だということがご理解いただけたと思います。
では、『あん摩、はり、きゆう、柔道整復 等 営業法の解説 現代語版』には第十二条についてどのように書かれているでしょうか。引用してみます。
第二節 医業類似行為禁止の原則
昭和23年以降、医業類似行為をどう扱うかについて、法第十二条は次のように規定し、それを禁止する原則を明らかにしている。
「第十二条 何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない」
この規定の意味は、「第一条に掲げるもの」、すなわち「 あん摩、はり、きゅう及び柔道整復」以外のもので、従来医業類似行為と称されてきたものは、今後は誰であってもこれを業としてはならないというのである。つまり、各都道府県令によって、届出制度または許可制度の下で、あるいは届出、許可などの手続きを必要としないで公認されてきたいわゆる医業類似行為または療術行為は、昭和23年1月1日以降は、一切これを業として行うことはできなくなったのである (もちろん、これには、いわゆる既得権者に対する例外が設けられている)。このように新規にこれを業として行うことが全面的に禁止されたのはなぜだろうか。医業類似行為については、特に衛生上有害と認められるものを国民医療法違反として取り締まるほかには、なにも取締に関する中央法令がなく、各都道府県の任意の取締に任せていた。そのために、種類も雑多で、その施術の内容効果なども十分究明されていないものが多く、中には全く荒唐無稽でいたずらに人心を惑わすだけと思われる類のものも決して少なくないのが実情だった。たとえ積極的に人体に危害を生じさせないまでも、医学上無益無効で、これによっていたずらに正当な医療を受ける機会を失わせ、疾病の治療回復の時期を遅らせると思われるものが多数あった。 しかも、終戦後の社会情勢の変革、これに伴う人心の混乱に乗じてこの傾向は一層助長され、様々な国民医療上の弊害が生じていた。そこで、これらの行為を従来のように半ば自由放任的な状態に放置することは、国民に対する正当な医療の普及徹底並びに我が国の保健衛生上の改善向上のために決して望ましくないと考えられたので、この際、既存業者を除き、今後は新規にこれを業として行うことになったのである。 もちろん、今回の措置は、あくまでも国民に正当な医療を享受する機会を与え、これによってわが国の保健衛生状態の改善向上を図るためにとられた措置であるから、今後、禁止された行為が十分に学理的に究明され、その医学的効果が確認され、国民の保健衛生に積極的に役立つと認められれば、改めて国家的に公認されると言うことも考えられる。
ただし、法第十二条によって禁止される医療類似行為は疾病の治療を目的とするものに限られ、単に保健を目的とするものは法第十二条によっては禁止されていない。仮にも疾病の治療を目的としていれば、たとえそれが医学上疾病治療の可能性のある行為であっても、法第十二条によって禁止されるのである。
そもそも「医業類似行為」「療術行為」という言葉自体、違法行為を表す言葉です。
免許なしに治療目的で行う行為全般を指します。
治療目的でない場合は禁止されていません。
例えば、無免許者が「肩こり」「腰痛」「膝痛」の「治療」を謳ってしまうとこれは医業類似行為となり禁止となります。
「医業類似行為」も非常に議論となっている言葉です。
これについてはまた別の機会に解説していきます。
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