「整体、整体師、整体院ってよくわからないです。」という方へ解説します。

みなさんは「病院へ行くほどではないが、なんとなく調子悪い」という時どこへ行きますか?

針専門の当院としてはもちろん針を試して欲しいところですが、選択肢はいくつかあります。鍼灸、マッサージ、整体、カイロプラクティック、オステオパシー、エステ、リラクゼーションなど。

今回は「整体」について深掘りしてみようと思います。

なぜ整体について書いてみようと思ったかというと、厚生労働省で2018年から2019年にかけて8回にわたって行われた、「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会」の議事録を読んだ時に私の知らなかった整体院の実態が記されていたことがきっかけでした。(2023年2月に第9回の検討会が行われました。実は私は直接その検討会を傍聴させて頂きました。その話はまた別の機会にしたいと思います。)

あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師等の広告に関する検討会

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei_547242.html

いずれこの議事録の内容をまとめてブログにしていこうと考えていますが、今回は「整体とは何か?」「整体師ってどういう職業?」「整体院って何するところ?」を解説していこうと思います。

目次

整体とは何か?

皆さんは「整体」と聞くとどういうイメージが湧いてきます?
「バキボキ関節を鳴らして骨格を整える感じ?」
「体を整えて体調を良くするの?」
「マッサージみたいなもの?」
色々なイメージがあると思います。

結論から言いますと、「整体は指圧の一部です」。
いきなりこう言われてもちょっと意味がわからないですよね。
「指圧って指で押すマッサージじゃん」って多くの方々が思ったのではないでしょうか?

これにはいろんな歴史的経緯があります。
昭和三十年八月十二日に厚生省医務局医事課は、「指圧とは導引・柔道活法・古来のあん摩術から発したものであるが、大正初期米国の各種整体療法の学理と手技を吸収した施術である」と指圧を定義しています。

ここに「各種整体療法」という言葉が出てきます。

これが整体です。

整体とは、戦前、欧米から入ってきたカイロプラクティック、オステオパシー、スポンジロセラピーなどの手技療法のことを指します。そしてそれらの整体療法は指圧として認知されていました

ですので整体を仕事とするためには国家資格である「あん摩マッサージ指圧師」の免許が必要です。
ちなみに「あん摩」の手技の中にも「指圧法」というものがあり、「指圧」自体が大きく分けて2種類の意味があります。

指圧とは?

「指圧」とは、
1、「あん摩」の手技の一つ「指圧法」
2、あん摩、マッサージ以外の手技療法の総称としての「指圧」

1、の意味はなんとなくわかると思います。
昔からある日本古来の手技療法である「あん摩」。この手技療法の中には軽擦法、揉捏法、叩打法、曲手など色々な種類の手技があり、その中の一つに圧迫法があり、その中に「指圧法」があります。ですので「あん摩の手技の一つ」という意味があります。

2、の意味はもう少し解説が必要ですよね。
これを解説するためには「あん摩マッサージ指圧師」という国家資格の歴史的経緯を説明する必要があります。

「整体」を解説するためには「指圧」について解説しなければならなくて、
「指圧」を解説するためには「あん摩マッサージ指圧師」という免許について解説しなければならない、
という状況ですが、皆さん、ついてこられます?
できる限りわかりやすくしますので頑張ってついてきてください!

「あん摩マッサージ指圧師」とは?

まず、「あん摩」と「マッサージ」と「指圧」は全く別の手技療法です。

1、「あん摩」は日本古来の手技療法。
2、「マッサージ」は西洋から輸入された当時、医療機関で主に行われていた手技療法。
3、「指圧」は先ほど解説したとおり、あん摩、マッサージ以外の手技療法の総称。


つまり、あん摩マッサージ指圧師免許とは、「あん摩師」「マッサージ師」「指圧師」の仕事をするための免許ということです。
誤解を恐れず申し上げますと、「あん摩マッサージその他手技療法師」免許とした方がわかりやすかったかもしれません。今風に言えば「あん摩マッサージその他セラピスト」免許でしょうか?

とにかく、治療目的(肩こりや腰痛などの症状に対して行う目的)の手技療法をする場合は、あん摩マッサージ指圧師の免許が必要ということです。
しかし、現状はそうなっていません。
無免許の手技療法が横行している現状があります。
それはなぜなのでしょうか?
その答えは歴史の中にあります。

戦後のあん摩マッサージ指圧師の歴史を紐解いてみましょう。

昭和22年に現在の「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律」の原型である「あん摩、はり、きゆう、柔道整復等営業法施行規則」が制定されました。この時は柔道整復師も同じ法律のくくりになっていました。
そして「あん摩師免許」で名称に「マッサージ」と「指圧」は含まれていません。
以降、様々な法改正や議論を経て、昭和39年より「あん摩師免許」は「あん摩マッサージ指圧師免許」となりました。
昭和22年から昭和39年までの17年間にいったい何があったのでしょうか?
これを読み解くための鍵が「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律」の中にあります。

第十二条 何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない。ただし、柔道整復を業とする場合については、柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)の定めるところによる。
第十二条の二 この法律の公布の際引き続き三箇月以上第一条に掲げるもの以外の医業類似行為を業としていた者であつて、あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法等の一部を改正する法律(昭和三十九年法律第百二十号。以下一部改正法律という。)による改正前の第十九条第一項の規定による届出をしていたものは、前条の規定にかかわらず、当該医業類似行為を業とすることができる。ただし、その者が第一条に規定する免許(柔道整復師の免許を含む。)を有する場合は、この限りでない。

第十二条にある「医業類似行為」に実は「指圧」が昭和22年には含まれていました。「医業類似行為」とは、「医業(医師しかやってはいけない治療全般の専門的な仕事)に類似した『違法な』行為」のことを言います。

昭和22年に法が制定される際、当時、医業類似行為であった指圧を仕事にしていた人で特例として届出をした人に限り、「届出医業類似行為業者」として昭和30年までその仕事を続けることが許されました。
行政の思惑としては、届出医業類似行為業者に8年間の間に免許を取るか、他の仕事に転職するかしてもらいたかったのですが事態はそうはなりませんでした。

昭和30年にどのような理由で法改正が行われたのかを見るとわかります。
特に、医業類似行為に関する改正の部分を見てみましょう。

昭和30年の法改正で盛り込まれた内容
1、今まで医業類似行為だった指圧を法律上あん摩として取り扱うことにした。
2、届出医業類似行為業者の特例期間を昭和33年まで延長
3、届出医業類似行為業者に学校行かなくてもあん摩師試験の受験資格を与え、試験を業者に有利になるような特例を設けた。

戦前から日本には前述した「医業類似行為」とか、同じ意味で「療術行為」という無免許で手技療法を行う違法業者がたくさんいました。それらを取り締まるのは各地方自治体だったのですが、その取締のあり方はまちまちでほとんどやりたい放題だったようです。それによる健康被害が多く、詐欺的行為も跋扈していました。

この状況を戦後なんとか取り締まり公共の福祉の実現するために「医業類似行為の禁止」を法律に盛り込んだのです。ですが今まで違法とはいえ、自治体に届出を出していれば営業の許可をもらえていた実態があります。それをなんとか監督、取締ができるよう、経過措置を取ることとなりました。それが上記の昭和30年の法改正で盛り込まれた内容です。

今現在、保健所に届出をしている「整体院」はほとんどありません。あるとすればあん摩マッサージ指圧師免許を持つ整体師があん摩マッサージ指圧の施術所として届出ているのがほとんどなのではないでしょうか。
かといって、あん摩マッサージ指圧師が「整体師」と名乗ったり、「整体院」という名称の看板を出して施術所を開業することは法律に違反する行為となります。なぜなら法律によって「広告制限」がかけられているからです。免許を持つ者は「整体」「整体師」「整体院」という名称は使用できず、無免許は黙認されるという非常に理不尽な状況になっています。

話を戻します。

上記の3点はその後、
昭和33年には昭和36年まで延長。
昭和36年には昭和39年まで延長。
そして昭和39年の法改正によって以下のことが内容に盛り込まれました。

昭和39年の法改正で盛り込まれた内容
1、「あん摩師免許」から「あん摩マッサージ指圧師免許」に名称変更
2、視覚障害者保護のため、あんまマッサージ指圧師については晴眼者を対象とする学校の認定、定員の増員の承認を行わないという選択を可能にしたこと。
3、あん摩マッサージ指圧師の業務、免許について中央審議会で審議することにしたこと
4、届出医業類似行為業者について、 その営業継続の期限を撤廃し、その取り扱いについて、中央審議会における審議を行い、その結果を参酌して、厚生大臣は必要な措置を講ずるべきとしたこと
5、 医業類似行為業について、昭和23年にやむを得ない事由によって届け出ができなかったものについて、この度、改めて再び届け出を行うことができることとしたこと
6、 届出類似行為業者は、昭和23年以降あん摩師等への転業、死亡等によって、この時点で約9300人となっていたが、この改正により新たに約2500人が届け出を行い営業を行うこととなった

いかがでしょう?

あん摩師免許があん摩マッサージ指圧師免許に変わる経緯を見るなんとなくわかっていただけたでしょうか?
昭和22年当時からの課題の一つは、「医業類似行為」という「無免許で行う治療行為」を仕事にしている人たちを如何に管理、監督していくか?ということでした。

様々な医業類似行為が当時からありましたが、一番多かったのが指圧業者、今で言ういわゆる「整体師」「カイロプラクター」とか「セラピスト」だったのです。

もちろん整体師であれ、カイロプラクターであれ、セラピストであれ、あん摩マッサージ指圧師の免許があれば違法ではありません(広告制限はありますが施術自体は許されます)。そして、はり師、きゅう師、柔道整復師、理学療法士などの免許を持っていてもあん摩マッサージ指圧師の免許がなければ違法です。

ちゃんと一定の教育を受けて国家試験を合格して免許を取って保健所に届出をして手技療法の仕事をしてほしい、というのが国、国民の願いだと思うのですが、なかなか思惑通りには行かない状況があったことがわかります。

さらに昭和35年に出された、いわゆる「最高裁判決」の内容が曲解されて大きく報道されたことで社会的に医業類似行為に関する誤解が広がってしまった背景もありました。
昭和35年最高裁判決については以下のブログで詳しく解説しておりますのでこちらも一緒にご覧いただけますと幸いです。

「無害有効な治療法」は免許なしでも業として行うことはアリか?ナシか? 昭和35年 最高裁判決文を読み解く

そして、昭和39年の法改正で盛り込まれた内容で注目すべきはこれです。
『2、視覚障害者保護のため、あんまマッサージ指圧師については晴眼者を対象とする学校の認定、定員の増員の承認を行わないという選択を可能にしたこと。』
そもそも「はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師免許」は視覚障害者の職業支援目的の免許でもあります。

日本の歴史上、鍼灸あん摩は、特に江戸時代以降、視覚障害者の治療家たちが手から手へと継承し、今現在まで引き継がれてきた伝統医学です。全日本鍼灸マッサージ師会という業界団体がありますが、昭和30年代、会員の75パーセント以上は視覚障害者で会長も視覚障害者でした。

特に「あん摩」に関しては視覚障害者の職業として社会的にも認知されていました。ですので視覚障害者団体は自分たちの職を守るためにこれ以上、晴眼者に職域を侵されることがないようにあん摩マッサージ指圧の専門学校を増やさないことを要望したのです。

そのため、昭和39年以降、晴眼者のためのあん摩マッサージ指圧の専門学校は全く増えていません。

また、6、の届出医業類似行為業者は現在でも特例が認められていますが、すでに90歳以上の人ばかりですのでほぼいなくなっていると考えて間違いないでしょう。
以上のことが昭和39年に決まったにもかかわらず、巷には整体院を多く見かけます。本来であれば、あん摩マッサージ指圧の専門学校は鍼灸や柔道整復の専門学校と比べたら少ない状況で、尚且つ届出医業類似行為業者はいなくなっている状況なので整体院がこんなに多いはずはありません。誰かが無免許で整体師をしていることは間違いないでしょう。

では、保健所に届出を出さずに整体院を開業し、そこで働く無免許の整体師とは一体どういう人たちなのでしょう?
次は「整体師」について紐解いていきます。

まとめ
1、今のトレンドである「整体」は一昔前の「指圧」でした。
2、指圧が免許に含まれてしまったため、無免許の手技療法の業者は「整体」という言葉を使いはじめたことにより、今現在の整体があります。
3、指圧はあん摩マッサージ以外の手技療法の総称として免許に入ったので整体もあん摩マッサージ指圧師免許がなければ違法です。
4、しかし、あん摩マッサージ指圧師免許を取ろうにも専門学校が少ないため取りたくても専門学校に入れない、という状況も地域によってはあるでしょう。
5、あん摩マッサージ指圧師という免許は視覚障害者の支援のための職という位置付けもあるために数が増やせない現状があります。
6、にもかかわらず、無免許で手技療法を行う業者が多くいること自体、視覚障害者の生活を脅かす大変由々しき事態だということです。

整体師とは?

整体について解説してきましたとおり、「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律」では、「整体」は指圧に含まれています。
ですので合法的に整体師になるためには、「あん摩マッサージ指圧師」の免許を取得しなければなりません。

参考文献

http://jsmh.umin.jp/journal/61-1/ippan/61-1_78.pdf

しかし、あん摩マッサージ指圧師になるための専門学校が非常に少ないため、合法的に整体をおこなっている整体師は非常に少ないであろうことが推察されます。
つまり、整体師には2種類います。
合法的な整体師とそうでない整体師です。
そして圧倒的に多いのは後者だということです。
あん摩マッサージ指圧師の免許を持っている整体師が合法的な整体師ですが、そうではない整体師はどういうバックグラウンドがあるのでしょうか?
以下の通り、表にしてみましたのでご覧ください。

・合法でない整体師
1、民間資格(国家資格などの免許がなにもない)
2、無免許(民間資格すらない。現状、誰でも今日からやろうと思えば整体院を開業できます。)
3、柔道整復師(本来は接骨院を開業できる)
4、はり師、きゅう師(本来は鍼灸院を開業できる)
5、理学療法士(本来は医療機関に勤務する。理学療法士としては開業権がない免許)
6、その他医療系の資格の所持者(看護師や作業療法士も開業権はない)

以上の通り、本来はあん摩マッサージ指圧師しか整体をやってはいけないのですが、この通り、言い方は悪いかもしれませんが、玉石混交、有象無象、もっと言えば混沌、カオスです。
以下のリンクの記事も今の状況を理解するためにご覧いただくことをお勧めします。

鍼灸師よ、誇りを失うな【特別講義編】/鍼灸師:芦野 純夫

https://haritohito.jp/interview/ashinosumio_sp/

あん摩マッサージ指圧師の免許を取得するための学校が少ない状況が長年続いています。

その理由は、視覚障害者の救済のための職業としてあん摩マッサージ指圧師の免許があるので健常者のあん摩マッサージ指圧師を増やしてしまうと視覚障害者のあるあん摩マッサージ指圧師が経済的に困窮する恐れがあるためです。(これについては前述しましたね)

しかし、需要は多くあるため、あん摩マッサージ指圧師の免許を取らずに無免許でそのような行為をしてしまう人たちがどんどん増えていきました。
その数が増え過ぎてしまっているために行政の取り締まりが追いつかない状況であることが一つ。
そして、学校が少なすぎるためにあん摩マッサージ指圧師になりたくてもなれない状況があります。
そのため、無免許の人たちを取り締まって、もし仮に「職業選択の自由」を保障する憲法違反として訴訟を起こされると、学校を作らせない国に責任がある、となる可能性があるため、取り締まろうにも取り締まれないと言われております。

以上のことから、整体だけでなく、あん摩マッサージ指圧師の職域がさまざまな形で侵食されているのです。

現状を鑑みると、おそらく視覚障害のあるあん摩マッサージ指圧師の方々も大変な思いをしていらっしゃるのではないかと推察されます。であるならば、あん摩マッサージ指圧師の学校を増やしていって無免許の人たちを取り締まっていくようにしたほうが良いのではないかな?と個人的には思います。
ちなみに、はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師に誰でもなれるわけではありません。
あはき法には以下の条文があります。

あはき法 第三条 次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。
 心身の障害によりあん摩マツサージ指圧師、はり師又はきゆう師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
 麻薬、大麻又はあへんの中毒者
 罰金以上の刑に処せられた者
 前号に該当する者を除くほか、第一条に規定する業務に関し犯罪又は不正の行為があつた者

無免許の人や民間資格の人、理学療法士が整体師として整体院を始める、というのは良くないにしてもなんとなく理解はできるのですが、柔道整復師やはり師きゅう師の免許を持っている人がなぜわざわざ整体師として整体院を始めるのでしょうか?柔道整復師なら接骨院、はり師きゅう師なら鍼灸院を開業すれば良いのではないか?と思いますよね。
その疑問に答えるために、整体院について解説していきます。

整体院とは?

整体院の開業
整体院を開業しようと思えば誰でもいつでもできます。
特に免許や資格は必要ありません。
(ただし、この状況はただ単に自治体や厚生労働省や警察が取り締まりをしていないだけであって、あはき法に照らし合わせれば違法です。)
ちなみにあん摩マッサージ指圧師がマッサージの施術所を開業するためには保健所に開設届を出し、保健所の担当者の立ち入り検査を受けて許可を受けなければなりません。待合室と施術室が壁で隔たりがなければならなかったり、一定の広さがなければならなかったり、院内が十分に明るくなければならなかったりと細かい決まりがあります。
整体院の場合は保健所への開設届の必要がないので自由に院内のレイアウトが作れます。

整体院の広告
整体院の広告規制はマッサージの施術所と比べると非常にゆるいです。
鍼灸、マッサージ、柔道整復の施術所の場合、広告できることは以下のものに限り、それ以外の物事は一切認められません。あはき法には以下の条文があります。

あはき法 第七条 あん摩業、マツサージ業、指圧業、はり業若しくはきゆう業又はこれらの施術所に関しては、何人も、いかなる方法によるを問わず、左に掲げる事項以外の事項について、広告をしてはならない。
 施術者である旨並びに施術者の氏名及び住所
 第一条に規定する業務の種類
 施術所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項
 施術日又は施術時間
 その他厚生労働大臣が指定する事項

このように施術の料金、施術所内の風景画像、施術者の顔写真、メールアドレス、ホームページのURLや施術所のロゴマークすら広告することは出来ません。
ただし、ここで言う広告とはポスティングのチラシや看板などのことでインターネットのホームページは広告には当たらないことになっています。とはいえ、広告規制がホームページにかかっていないとは言え、薬機法や景品表示法など一般的な法律の規制はかかりますので何でもかんでも自由にホームページで広告することはできません。
整体院の場合、あはき法の対象ではなく、保健所の管轄からも外れているため、ポスティングのチラシなど比較的自由に作成することができます。サービスメニュー、サービス内容、サービス料金、割引価格、店舗の画像、スタッフの顔写真などを使ってチラシを作成しても咎められません。
また、鍼灸院や接骨院、マッサージ院は施術所内のレイアウトなどが以下の通り制限されています。

施術所の構造設備基準
6.6平方メートル以上の専用の施術室があること。
3.3平方メートル以上の待合室があること。
施術室面積の7分の1以上に相当する部分を外気に開放し得ること。
ただし、これに代わるべき適当な換気装置があるときはこの限りではありません。
施術に用いる器具、手指等の消毒設備を有すること。

衛生上必要な措置
常に清潔に保たれていること。
採光、照明及び換気が充分になされていること。
施術所は、住居や他の店舗等と構造上独立していること。(出入口を別に設ける等明確に区画すること)
施術室と待合室の区画を固定壁等で適切に仕切ること。

これらの規制も整体院には適用されません。
適用されないというよりは、保健所への届出をしないので管理監督ができないということです。
鍼灸院、マッサージ院、接骨院を開業する際は保健所への開設届を出して立入検査を受けて認可を受ける必要があります。
しかし、整体院の場合はそれがないし、保健所へ届出もしないために保健所も整体院がどこに何軒あるかも中で誰が働いているのかもわからない状況です。

これを取り締まることをなぜか行政はほとんどしません。
様々な被害者の出る刑事事件になって初めて明るみに出る感じではないでしょうか。
この状況をいいことに上記の規制を掻い潜るために「整体院」を利用するあん摩マッサージ指圧師ではない、別の免許を持つ者がいます。
その例を上記で挙げました「広告に関する検討会」で話題になりました。

保健所に「接骨院」として開設届を出し、看板は「整体院」で営業する柔道整復師

『ある人の家のポストに整体院のチラシが入っていた。試しに行っていようと思って行ったらがなぜか保険証の提示を求められ、保険請求の書類にサインをさせられた。
そして自費で回数券を購入ししばらく通った。
ある日、患者の入ってる保険組合から療養費請求に関する確認の書類が届き、初めて通っていた整体院が接骨院だと気づく。』
そんな話があります。
広告規制が接骨院にはかかるので整体院として看板を出して集客する。
そして自費での治療をするが同時に保険証を提示させて療養費の不正請求を行う。
保健所、保険者、患者を騙す非常に悪質な行為です。
別の事例を見てみましょう。

保健所に出張による開業として届出て、整体院の看板で開業し、鍼灸治療をする鍼灸師

鍼灸院を開業するのは実は少々ハードルが高めです。
どのようなハードルかというと、お灸の際、火を使います。それが火事のリスクとして写ってしまい、テナントに、入りづらかったりします。マンションの一室で開業することが鍼灸院の場合、最近は多いのですがその際もお灸が理由で断られてしまうこともあります。
そのため、整体院であれば火を使わないのでテナント契約しやすい、という皮肉なことがあります。
ですので、鍼灸師の中にはこんなやり方で開業する人もいます。まず、出張専門として保健所に届出をします。すると特に立ち入り検査などはなく、届出住所も自宅にして問題ありません。そして整体院としてマンションの一室などで開業します。そして整体院としてチラシをまき、集客し、無免許の手技療法を行い、あわよくば「実は鍼灸もできるんですよ」という感じで患者に鍼灸を勧める、という具合です。
これも保健所、テナントの契約先、患者を騙す行為です。

他にも様々なやり方でいろんなバックグラウンドのあるあん摩マッサージ指圧師の免許を持たない人がやっているのが整体院です。

まとめ

いかがでしょう?
ざっくりとですが「整体」「整体師」「整体院」とは何か?を解説してみました。
「なんか疲れたな」という時は看板を見て店を選ぶのではなく、その中で働いている人の持つ免許に注目していただくことをお勧めします。
マッサージをしてもらいたいのであれば、「あん摩マッサージ指圧師」の免許を持っている人のいる店に行きましょう。
ちなみに当院「おかの針療院」ですが、私は「あん摩マッサージ指圧師」の免許持ってます(笑)






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